essay
なぜだか、ぼくたちの世界ではほとんどすべての情報が「勝ち組」にむかって送りだされているように見える。
今、あなたが手にしている美しいマガジンもそうだ。
もちろん雑誌は人の心を躍らせるものだから、このセレクトに間違いない。
誰だって、きれいなものが好きなのだ。
でもね、ぼくはときどき思う。
シューカツをあきらめて、フリーターや引きこもりになる若者、あるいはファッションやメイクや男女交際が実は苦手で無理して周囲にあわせているごく普通の女性、そうした世界の見えにくい半分の人たちにむかって発信されるメッセージがもっとあってもいいのになあ。
自分のペースで生きているだけなのに、今の時代の追いかけられるようなテンポから、自然にはずれていってしまう。そういう人がたくさんいると思うのだ。誰もがそんなにまえむきになる必要などないし、明るく元気でにこにこしていなければならない理由もない。ときには誰とも会わずに、毛布をかぶって一日すごすこともあるだろう。それが人間だからね。
思えば、小説というものは、そういう傷ついた人によりそうメディアだったのかもしれない。
ぼくも世界の光があたらない半分のために、もうすこし地道にがんばってみようかな。 (一部省略あり)
雑誌に掲載されていた石田衣良さんのエッセイ
「彼女たちのストーリー」の中で共感できる部分があったので、
書き留めておきたいと思いブログに載せました。
今の自分はまだ幸せなほうで、
今この瞬間も悩み苦しんでいる子供たち、大人たちが
日本中にいるんだろうな・・・と感じ胸が痛くなることがあります。